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Thursday, May 29, 2008

「君が代」強制解雇裁判・控訴審 第3回口頭弁論の傍聴と板橋高校卒業式事件裁判の速報

Peace Journalist 菊野由美子

   2008年5月13日午後3時、東京高等裁判所で「君が代」強制解雇裁判・控訴審 第3回口頭弁論を傍聴した。予防訴訟の原告の一人である片山むぎほ先生の計らいで、傍聴抽選に並ぶことなく入ることができた。約100名の傍聴席は満席だった。






控訴人の一人である教師歴31年の都立工芸高校・インテリア科の久保田先生の陳述が始まる。
都立工芸高校では、教師と生徒が納得いくまで話し合うことを重要とし実践してきたことを強調した。その例として、学校での服装の自由を求める運動でも、とことん話し合い自由化にした。卒業式の服装もそれぞれで、卒業生の顔を確認しながら卒業証書を渡していたが、壇上で渡さなくてはならなくなり、それもできなくなった。そして、「日の丸・君が代」に反対するのは、戦時中のナショナリズムのシンボルであったこと、その戦争のために家族がばらばらになってしまったことなどを語った。加えて、内心の自由を信じてきたが、今では教職員会議での採択も取らせないなど、教育の自由を奪われていることを主張した。


続いて、憲法19条に思想・良心の自由が保障されていることを核に新村弁護士の陳述が始まる。
教師は生徒の模範にならなくてはならない、だから日の丸に起立しなければならないと都教委側は主張するが、生徒にも選択の自由がある。ならば、先生はそのモデルになるべく、立つ、立たないの自由があるはずだと説明した。そして、生徒に不起立を教えているのではなく、起立・不起立の両方の選択があるのだとを教えていることを主張した。最後に、証人申請に2人の卒業生を立てる理由を述べた。生徒は、先生が命令されていることに敏感に反応しており、卒業式がどのように変わったかを聞いてほしいこと、また、「裁判官もご自身の高校時代を思い出してください。問題に対して自分なりに考えていこうという思考力をお持ちだったはずです。」と生徒達で「日の丸・君が代」について自主的に議論しており、十分に思想・良心の自由を考え、判断できることを主張した。

約30分ほどの口頭弁論が終わると、弁護士会館で報告集会が開かれた。そこには約50名の弁護団の中の13名が出席しており、約100名もの参加者が報告に熱心に耳を傾けた。
そのとき、カナダ・バンクーバーのピース・フィロソフィー・センターから派遣されてやって来た我々も紹介された。私は、「バンクーバーで“君が代不起立”のドキュメンタリーを見て、今日本でこのようなことが起こっていることに衝撃を受けた。裁判で勝つには世論を高める必要があるので、日本国内だけではなく、海外にも情報を発信していきたい。」と話し、同行していただいたバンクーバー9条の会の岩下美佐子さん(大阪の元中学社会科教師)は、「自分も足が振るえ、心臓が凍りつくような気持ちを抱きしめながら卒業式では着席していた。しかしそのとき、多くの生徒も座っていた。早期退職しバンクーバーで確信したことは、国旗国家の強制は国際慣例ではないということ。皆さんがんばってください。」と力強いエールを送った。






またこの報告会では、教育の自由を守るための様々な裁判が行われていることを知った。中学社会科教師・増田都子さんは、社会科の授業で南京大虐殺、従軍慰安婦、米軍基地問題などを取り上げ、生徒に紙上討論をさせたことなどを理由に、教師としてふさわしくないとされ分限解雇処分を受け、撤回を求める裁判を闘っている。
予防訴訟の進展としては、証人申請に憲法学者の渋谷秀樹先生を予定していることが伝えられた。渋谷先生は、「君が代・日の丸」強制は憲法19条(思想良心の自由を保障)に違反していることを明言している。参考までに証人申請としてではないが、やはり憲法19条に違反していることに同意している憲法学者は、カナダ・バンクーバーにあるUBC(ブリティッシュ・コロンビア大学)の法学部松井茂記教授であることも伝えられた。

最後に、「板橋高校裁判控訴審」の経過も報告された。これは、ドキュメンタリー映画「君が代不起立」にも登場していた元板橋高校教論、藤田勝久さんが、2004年3月、同学校の卒業式で「君が代・日の丸」強制の反対を呼びかけたことが、卒業式の進行を遅らせたとし威力業務妨害罪に問われていた事件だ。5月29日東京高等裁判所で開かれる判決の理由言い渡しが異例の長さの90分かかることや、公正な裁判を求める15000名の署名が高裁へ提出されたことから、藤田さんの無罪判決を期待しているなどの報告があった。
しかし迎えた5月29日、須田まさる裁判長は1審と同じく藤田さんへ「罰金20万円」の有罪を言い渡し控訴を棄却した。加えて、校長の起立を命じる職務命令を「合憲」とした。
弁護団はこれを不当判決とし、直ちに上告の手続きを取った。

  大変残念な結果である。しかし、うつむいたままではいられない。多くの支持者や弁護団とともにさらなる世論を高めて、子供たちにとって大事な場所のひとつである教育の場に、自由と楽しさと結びつきを失うことなく築いていこう。

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